【KNOCK OUT】唯一の黒星を付けられた久井大夢に挑む龍聖「今回は初めて、自分の自己満で人を笑顔にできると思う」“KING OF KNOCK OUT”襲名へ
2025年6月22日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館『THE KNOCK OUT 2025』(U-NEXT配信)のメインイベントにて、KNOCK OUT-BLACKスーパーフェザー級タイトルマッチ3分3R延長1Rで、王者・久井大夢(TEAM TAIMU)に挑戦する龍聖(BRAID)のインタビューが主催者を通じて届いた。
龍聖は小学1年生でキックボクシングを始め、アマチュアで多くの経験を積んで2019年4月にプロデビュー。2021年10月にはKNOCK OUT-BLACKフェザー級初代王座に就いた。RIZIN、巌流島でも勝利し、2023年3月にはラジャダムナンスタジアム認定スーパーバンタム級王者ペットセーンセーブと対戦し延長戦でダウンを奪って勝利。6月にはチュームーシーフーにダウンを奪われるも延長戦で逆転勝利、12月にはファク・スアレスをKO。
2024年4月にSBの川上叶に判定勝ちとデビュー以来の無敗記録を更新していたが、6月に久井大夢に判定負け。デビュー以来の無敗記録が「17」で途絶えた。12月にブライアン・ガビオに判定勝ちでISKA世界スーパーフェザー級(K-1ルール)王座を獲得すると、2025年3月のONE日本大会に初参戦し、スリヤンレックに完勝を収めた。戦績は19勝(11KO)1敗。
プロ初黒星にして唯一の負けを喫した昨年の代々木大会からちょうど1年。ついにリターンマッチの機会を得た龍聖は、この大一番に何を思う?
──ついに念願の試合が決まったわけですが、正式に決まった時にはどう思いましたか?
「『おお、いよいよか!』という気持ちはありましたね。3月のONEでの試合がクリアできたら6月に久井戦というのが、決まってたわけではないけど、方向性としてはあったので、『よし、次か!』という気持ちでした。今年は3月に始まって、6月に久井戦をやったら一度休憩だなと思っていたので、決まったからって急に緊張したりというのはなかったですけど」
──昨年6月に久井選手に敗れた直後は、再戦にかなり前のめりでしたよね。そこから結局1年を要したわけですが、そこについては?
「正直、去年の6月の時点では、10回やったら8回僕が勝って2回大夢が勝つという感じで、力の差はあったと思うんです。あの日はその2回を引き当てられた感じでしたけど、すぐ再戦していたら力の差で僕が勝っていたかもしれないし、でもあの頃はまだノップとの練習はできていなかったし、実現していたら間隔も短かったわけで、僕のスタイル的にもまたやられていたかもしれないし。今回は1年空いたことで、ノップとの練習も再開して間違いなく強くなっているし、距離感とかの感覚も戻ってきている実感はあります。ただ大夢も若いし成長するから、そこはどうなるか、結果は分からないなという感じですかね」
──この1年間、久井選手の戦いはどう見ていましたか?
「もちろん全試合見ていますけど、1回僕に勝って『久井大夢の時代が来た』みたいになったこともあって、正直、試合を見るのがイヤだったというのもありました。『俺の場所を取られた』という気持ちもあって。それに、次の大会もすごかったじゃないですか」
──昨年8月のチョット・サレイヴァントン戦、胴廻し回転蹴りでのKOですね。
「僕に勝った次にあの勝ち方をして、本当に『コイツ、ヤバいな! ノってるな!』という感じになったじゃないですか。でもその後はKOできない試合もあったり、負けたりもして、『やっぱりKNOCK OUTを任せることはできないな』と思いました」
──一方の龍聖選手は、6月の次が12月のブライアン・ガビオ戦、そして3月にONEでスリヤンレック戦があって今回と、間に2試合のみでしたよね。この間は試合が少なかった分、練習に打ち込めた感じですか?
「それは間違いないですね。ノップともまた練習できるようになって、一番は距離感が戻ってきたのと、頭を使って考えながら戦うことができるようになったし、メンタル面も改善できました」
──今回から所属も新たに「BRAID」になり、環境的にも落ち着きましたか?
「そうですね。今は本当に自分が望む形に落ち着いたなと思います。試合前ということもありますけど、今はメイントレーナーは全部ノップで、週2~3回はBRAIDの方に来てくれています。それ以外は伊原道場越谷に行っている感じですね。あと週1~2回は軍司泰斗君とも練習しています」
──去年までは、軍司選手と龍聖選手が一緒に練習するようになるなんて想像もつかなかったですけどね。
「去年10月に軍司君が試合した時も『やろうぜ』って言われてたし、そう考えると確かにすごいなあと思いますね」
──すごいと言えば、BRAIDでバズーカ巧樹選手と一緒にやっているのも大きな変化ですよね。以前からセコンドについたりもしていましたが、バズーカ選手のジムの所属になるとはという。
「『仲間』として大きい存在ですからね。それまでお世話になっていたKNOCK OUT GYM調布の栗秋(和輝)先生、ケアなどをしてくれるトレーナー、そこにバズーカとノップが加わってくれたというのは本当に百人力というか、鬼に金棒だし、メンタル的にも『この人たちがいてくれれば俺は大丈夫だ』と思えるのも大きいですね」
──先ほど、久井選手の戦いを見て「KNOCK OUTは任せられない」という思いがあったと話していましたよね。それだけに、龍聖選手には『ここで勝って、これからのKNOCK OUTを改めて引っ張る』という気持ちも強いのでは?
「もちろん。ここまでKNOCK OUTでも1試合しかできてなかったし、個人的にもいろんな波がありながらKNOCK OUTの状況を見ていて、『やっぱり俺がいないとな』という思いも大きくなっています」
──今回はリベンジマッチでもありますが、龍聖選手にとっては再スタートの試合でもありますよね。
「そうですね。僕、ずっと負けてなかったじゃないですか。キャラクター的にもアンチもいるような感じでしたけど、僕としてはキャラを作りすぎてたわけでもなくて、多少作ってた部分もありましたけど、本音で言ってた部分もあって。僕も人間だからアンチのコメントとかは見ていて気持ちいいわけでもないし、『どんどん来いよ』というわけでもないんですよね。
それで去年の6月に初めて負けて、直後は少し記憶が曖昧だったんですけど、『負けたんだな』ということをしっかり認識してからは、XなどのSNSを見るのがすごくイヤだったんですよ。通知はものすごく来てたんですけど、『みんな、僕が負けてすごく喜んでるんだろうな』と思って。『この日を待ってた』という人がすごく多いんだろうなとも思ったんです」
──そう思うのも仕方ないと思います。
「だからすごく叩かれてるんだろうなと思ったんですけど、いざ携帯を開いてみたら、叩くようなコメントは数えるほどしかなくて。むしろ『ありがとう』とか『感動した』というコメントがほとんどだったんですよ。中には『今までの龍聖で一番カッコよかった』とか『今まで好きじゃなかったけど、今日の試合で好きになった』という声もあって。そのコメントに、僕はメッチャ元気をもらったんです」
──そうですか。
「SNSって、悪い使い方の方が目立つと思うんですけど、僕はSNSにすごく救われた一人で、格闘技ファンのみんなにすごく救われたんです。だから、僕がここからまた復活して久井を倒す姿を、みんなに見せなきゃいけないなというのをすごく思っていて。今回、知名度とか実績とか、いろんな面で僕は久井より全然上だと思うんですよ。唯一の負けを彼に喫したというだけで。
むしろ、ONEから僕のことを知ってくれた人とか、最近好きになってくれた人だと、久井を知らないという人も多いと思うんです。だから正直、僕がここで久井とやるのはリスクしかないと思うんですよね。ここでまた久井に負けたら『久井には絶対勝てないヤツ』というイメージがつくと思うし。そんな中で僕が久井とやらせてくれというのは、僕の自己満に過ぎないわけじゃないですか」
──……。
「今回、1年越しに久井とやらせてほしいということは、僕の自己満なんですよ。実際、僕は性格的にも自己中心的で、それこそ『暴君』だったし、彼女だったりとか友人、仲間…いろんな人をこの性格のために傷つけてきたと思うんです。『ああ、龍聖の自己中な性格のせいで、あの時、迷惑を被ったよ』という人もたくさんいると思うんですけど、そういうのを思い返しても今回は初めて、自分の自己満で人を笑顔にできると思うんですよね」
──なるほど。
「僕の自己満と、人々の笑顔だったり『ありがとう』という気持ちがリンクするという、自分の人生で初めての体験だと思っていて。今回はファンのみんなのために戦うし、もちろん自分のために戦うし、すごく心身ともに一番いい状況なんじゃないかなと思いますね」
──今までになかったような心境で試合を迎えているわけですね。
「そうですね。去年の久井戦の時は、その時は分かってなかったんですけど、今思えばすごく浮ついた感じだったんです。今はそういうのも全くないですし、最近は『大人になったね』とか『変わったね』って言われることが多くて。そういうところも試合で見せたいなと思っています。本当に龍聖らしい試合をしたいなと思います」
──でも、試合内容まで“大人”になるわけじゃないでしょう?
「それはそうですね。“大人”な試合をしたところで人に勇気とか感動を与えられないと思いますし。本当に今回の試合は、去年の4R目のつもりで戦います。前回の2R、3Rの続きのつもりで、1Rからいこうと思っています」
──前回は1Rに2度のダウンを奪われて、2R・3Rは死に物狂いで挽回に出ていましたからね。
「はい。ガンガンに詰めてガンガンに殴っていきたいですね」
──リング内では変わらず自己中でいくと。
「そうですね。ここで僕が勝てば、正真正銘の『KING OF KNOCK OUT』になれると思うので。6月22日に『暴君』を卒業して、『KING OF KNOCK OUT』になりたいと思います」
──では最後に、今回の試合で一番注目してほしいポイントはどこでしょう?
「僕が勝つところですね。勝利する瞬間、勝者のコールを受ける瞬間を楽しみにしてほしいと思います」